『チリ農業省農業政策・調査局(ODEPA)』からワインに関する報告書(2023年2月)が発行されました。
この報告書で 2023 年1月の「チリワインの輸出状況」について、分析された結果が公表されております。
全体的に輸出量も輸出額も前年同期比で【13〜16%減】。
それでは詳細を確認していきましょう!
2023 年1月のチリワイン輸出状況
2023 年1月の輸出に関しては、以下のような状況となっております。
- 総輸出量:60,100,000 リットル(前年同期比:▲15.8%)
- 総輸出額:131,600,000 ドル(前年同期比:▲13.8%)
全部で6つのカテゴリーがありますが、原産地呼称(D.O.:Denominación de Origen)やバルクワイン、スパークリングワインの3つのカテゴリーの内訳は以下となります。
原産地呼称(D.O.:Denominación de Origen)
- D.O. 輸出量:28,000,000 リットル(前年同期比:▲18.1%)
- D.O. 輸出額:94,000,000 ドル(前年同期比:▲15.9%)
バルクワイン
- 輸出量:27,400,000 リットル(前年同期比:▲14.5%)
- 輸出額:27,300,000 ドル(前年同期比:▲8.3%)
スパークリングワイン
- 輸出量:200,000 リットル(前年同期比:▲41.1%)
- 輸出額:800,000 ドル(前年同期比:▲34.5%)
価格帯別の輸出量&輸出額(今回は変更点なし)
原産地呼称(D.O.)ワイン
2022 年の「D.O. ワイン輸出」に関して、1ケースあたり* の価格帯別の情報が出ています。輸出総額が一番大きい価格帯は「20ドル以上30ドル未満」のワインで、全体の【33%】を占めています。
*1ケース:9リットル(750mlのボトルが12本)
その他の考察としては、ケースあたりの平均単価は「100 ドル以上」のカテゴリーを除き、昨年対比で【-0.3 〜 +0.5 ドル】の幅で動いているだけです。「100 ドル以上」のカテゴリーに関しては、昨年から1ケースあたり平均単価が 5.8 ドル下がっています。
20ドル未満:
- 輸出量:14,900,000 ケース(2021 年:13,800,000 ケース)
- 輸出額:260,800,000 ドル(2021 年:234,600,000 ドル)
- 平均単価:17.5 ドル/ケース(2021 年:17.0 ドル/ケース)
20ドル以上30ドル未満:
- 輸出量:20,500,000 ケース(2021 年:21,100,000 ケース)
- 輸出額:481,200,000 ドル(2021 年:501,900,000 ドル)
- 平均単価:23.5 ドル/ケース(2021 年:23.8 ドル/ケース)
30ドル以上40ドル未満:
- 輸出量:7,300,000 ケース(2021 年:7,600,000 ケース)
- 輸出額:250,600,000 ドル(2021 年:263,200,000 ドル)
- 平均単価:34.3 ドル/ケース(2021 年:34.6 ドル/ケース)
40ドル以上60ドル未満:
- 輸出量:4,200,000 ケース(2021 年:4,900,000 ケース)
- 輸出額:193,700,000 ドル(2021 年:226,900,000 ドル)
- 平均単価:46.1 ドル/ケース(2021 年:46.3 ドル/ケース)
60ドル以上100ドル未満:
- 輸出量:1,800,000 ケース(2021 年:1,800,000 ケース)
- 輸出額:134,200,000 ドル(2021 年:134,800,000 ドル)
- 平均単価:74.6 ドル/ケース(2021 年:74.9 ドル/ケース)
100ドル以上:
- 輸出量:600,000 ケース(2021 年:600,000 ケース)
- 輸出額:138,900,000 ドル(2021 年:142,400,000 ドル)
- 平均単価:231.5 ドル/ケース(2021 年:237.3 ドル/ケース)
バルクワイン
「バルクワインの価格帯」については以下の通りとなります。輸出総額が一番大きい価格帯は「1リットルあたり0.8ドル未満」のワインで、全体の【33%】を占めています。
気づいた点が2点あります。
- リットルあたりの平均単価が上がっていないこと。ほぼ増減がないのですが、『3〜10 ドル』のカテゴリーでは、平均単価が 0.4 ドル近く下がっています。
- 『1〜1.5 ドル』のカテゴリーが占める割合が増加したこと。2021 年だと全体の 12% だったのが、2022 年では 26% に増えました。
0.8ドル未満
- 輸出量:152,600,000 リットル(2021 年:197,300,000 リットル)
- 輸出額:99,700,000 ドル(2021 年:131,600,000 ドル)
- 平均単価:0.65 ドル/リットル(2021 年:0.67 ドル/リットル)
0.8ドル以上1ドル未満:
- 輸出量:74,400,000 リットル(2021 年:99,500,000 リットル)
- 輸出額:65,000,000 ドル(2021 年:86,400,000 ドル)
- 平均単価:0.87 ドル/リットル(2021 年:0.87 ドル/リットル)
1ドル以上1.5ドル未満:
- 輸出量:67,300,000 リットル(2021 年:32,200,000 リットル)
- 輸出額:76,800,000 リットル(2021 年:37,900,000 ドル)
- 平均単価:1.14 ドル/リットル(2021 年:1.18 ドル/リットル)
1.5ドル以上3ドル未満:
- 輸出量:26,500,000 リットル(2021 年:21,000,000 リットル)
- 輸出額:50,000,000 ドル(2021 年:40.600.000 ドル)
- 平均単価:1.89 ドル/リットル(2021 年:1.93 ドル/リットル)
3ドル以上10ドル未満:
- 輸出量:2,000,000 リットル(2021 年:3,000,000 リットル)
- 輸出額:7,400,000 ドル(2021 年:12.200.000 ドル)
- 平均単価:3.70 ドル/リットル(2021 年:4.07 ドル/リットル)
10ドル以上:
- 輸出量:ほぼ実績なし
- 輸出額:ほぼ実績なし
ブドウの品種別
「ブドウの品種ごと」の輸出量や輸出額を確認してみました。
2023 年1月で最も「輸出量」の多い単一品種トップ5は以下となります。【カベルネ・ソーヴィニヨン】がダントツで多いです。
( )内は前年同期比
- カベルネ・ソーヴィニヨン:4,741,000 リットル(▲36.8%)
- シャルドネ:2,570,000 リットル(▲10.9%)
- ソーヴィニヨン・ブラン:2,322,000 リットル(▲30.0%)
- カルメネール:1,759,000リットル(▲17.3%)
- メルロ:1,723,000リットル(▲39.2%)
前年対比で輸出量の変動が大きい品種は以下の通りです。
増加
- マルベック:+20.5%
- ピノ・ブラン:+10.2%
減少
- ピノ・ノワール:▲48.8%
- メルロ:▲39.2%
- カベルネ・ソーヴィニヨン:▲36.8%
2023 年1月で最も「輸出額(FOB)」の多い単一品種トップ5は以下となります。
( )内は前年同期比
- カベルネ・ソーヴィニヨン:17,108,000 ドル(▲37.1%)
- シャルドネ:7,929,000 ドル(▲14.5%)
- カルメネール:7,387,000ドル(▲2.2%)
- ソーヴィニヨン・ブラン:6,377,000 ドル(▲32.3%)
- メルロ:4,532,000ドル(▲42.3%)
前年対比で輸出量の変動が大きい品種は以下の通りです。
増加
- マルベック:+7.2%
減少
- ペドロ・ヒメネス:▲55.6%
- メルロ:▲42.3%
- カベルネ・フラン:▲38.9%
輸出先別
次に「輸出先別」にみた輸出量や輸出額の情報となります。
D.O. ワイン、バルクワイン、スパークリングワインの順です。
D.O. ワイン
2023 年1月で、「D.O. ワイン」の輸出量が多い国のランキングです。
( )内は前年同期比
- 日本:3,683,000 リットル(▲14.9%)
- ブラジル:3,658,000 リットル(▲4.1%)
- イギリス:2,260,000 リットル(▲46.3%)
- 中国:2,094,000 リットル(▲61.8%)
- アメリカ:2,007,000 リットル(▲3.5%)
1月単体だと、日本が最も「D.O. ワイン」の輸出量の多い国となりました。ブラジルとアメリカは落ち込みが緩やか。中国向けがかなり落ち込んだ月でしたね。
増加
- ドイツ:+196.9%
- 韓国:+17.7%
減少
- 中国:▲61.8%
- イギリス:▲46.3%
- カナダ:▲45.4%
2023 年1月で、「D.O. ワイン」の輸出額(FOB)が多い国のランキングです。
( )内は前年同期比
- ブラジル:11,174,000 ドル(+12%)
- 中国:9,898,000 ドル(▲52%)
- 日本:9,858,000 ドル(▲16%)
- アメリカ:7,988,000 ドル(▲5%)
- イギリス:6,719,000 ドル(▲49%)
中国の輸出量は日本を下回っていましたが、輸出額では上位にいます。ということは、中国向けの方が、ワインの単価が高いということになりますね。同じワインで単に取引単価が異なるのか、それとも中国の方がより価格の高いワインを好む傾向があるのか。この辺りが気になりますね!
増加
- ドイツ:+232%
- 韓国:+49%
- ブラジル:+12%
減少
- 中国:▲52%
- イギリス:▲49%
- カナダ:▲49%
バルクワイン
2023 年1月で、「バルクワイン」の輸出量が多い国のランキングです。
( )内は前年同期比
- 中国:10,587,000 リットル(+204%)
- イギリス:4,810,000 リットル(▲27.7%)
- アメリカ:4,114,000 リットル(▲67.4%)
- ドイツ:2,040,000 リットル(▲27.4%)
- 日本:1,964,000 リットル(+26.5%)
どうしても中国の動向が気になってしまうのですが、バルクの方は前年同期比で3倍になっています。D.O. ワインの方は 60% 以上も輸出量が減少していましたね。
増加
- メキシコ:+1700.0%
- デンマーク:+285.7%
- 中国:+204.0%
減少
- アメリカ:▲67.4%
- イギリス:▲27.7%
- ドイツ:▲27.4%
2023 年1月で「バルクワイン」の輸出額(FOB)が多い国のランキングです。
( )内は前年同期比
- 中国:10,646,000 ドル(+107%)
- イギリス:6,079,000 ドル(▲10%)
- アメリカ:3,793,000 ドル(▲61%)
- ドイツ:1,622,000 ドル(▲36%)
- 日本:1,562,000 ドル(+19.0%)
増加
- メキシコ:+1005%
- デンマーク:+258%
- 中国:+107%
減少
- アメリカ:▲61%
- ドイツ:▲36%
- カナダ:▲26%
スパークリング
2023 年1月で「スパークリング」の輸出量が多い国のランキングです。
( )内は前年同期比
- 日本:83,000 リットル(▲26%)
- アメリカ:19,000 リットル(+107%)
- ブラジル:23,000 リットル(▲26%)
- キプロス:9,000 リットル(実績なし)
- デンマーク:5,000 リットル(1,000 リットル未満)
日本は安定の一位。キプロスとデンマークに関しては、昨年1月に輸出実績がない、または 1,000 リットル未満のボリュームだったため比較できません。デンマークと同率5位につけている国は、パラグアイ、パナマ、タイと3か国あります。
増加
- アメリカ:+1800%
- パラグアイ:+66.7%
- キューバ:+50%
減少
- ブラジル:▲73.6%
- パナマ:▲70.6%
- ベネズエラ:▲33.3%
2023 年1月で「スパークリング」の輸出額(FOB)が多い国のランキングです。
( )内は前年同期比
- 日本:370,000 ドル(▲6%)
- アメリカ:63,000 ドル(+950%)
- ブラジル:56,000 ドル(▲78%)
- キプロス:46,000 ドル(実績なし)
- デンマーク:38,000 ドル(+850%)
増加
- アメリカ:+950%
- デンマーク:+850%
- パラグアイ:+267%
減少
- ブラジル:▲78%
- パナマ:▲66%
- ベネズエラ:▲30%
品種別生産量(変更なし)
最後に品種別の「生産量」です。
- カベルネ・ソーヴィニヨン:340,922,000リットル
- ソービニヨン・ブラン:141,061,000リットル
- メルロー:123,223,000リットル
- シャルドネ:104,103,000リットル
- カルメネール:88,431,000リットル
- シラー:61,230,000リットル
- ペドロ・ヒメネス:31,495,000リットル
- ピノ・ノワール:26,947,000リットル
- マルベック:25,691,000リットル
- パイス:15,947,000リットル
- モスカテル:11,990,000リットル
最後に
これまでは何気なく飲んでいたワイン。当然ながらワイン産業は、チリの主要産業の一つなので、きちんとしたデータが当局から発行されております。こういった数字を眺めながら、ワインを飲むのも楽しいかもしれません笑。
先月に以下のように記載しました。
2022 年を見ると全体的に輸出量および輸出額ともに落ち込んでおりますね。チリは 2023 年の方がより不景気になると言われています。今年の動向に注意ですね!
1月単体だけの数字を見ると、「早速ワイン業界に不景気が到来したのか?!」と思っちゃいますよね。これが一過性のものであることを願い、次月以降の報告書も確認していきますね。
「中国はストラテジーを変えてきているのかな?」と錯覚するような結果となっていました。ボトルワインでの輸入量が激減しているのに、バルクワインの輸入量は激増中でしたね。こちらも引き続きウォッチしていきます。
最後に、2月にサクラアワードの結果が発表されましたので、チリワイン特集を記事にしてます。ぜひご覧ください!