『チリ農業省農業政策・調査局(ODEPA)』からワインに関する報告書が発行されました。
この報告書で、2023年3月の「チリワインの輸出状況」について、分析された結果が公表されております。
全体的に輸出量も輸出額も前年同期比で【17〜19%減】。
それでは詳細を確認していきましょう!
2023年3月のチリワイン輸出状況
2023年3月までの輸出に関しては、以下のような状況となっております。
- 総輸出量:167,500,000 リットル(前年同期比:▲16.9%)
- 総輸出額:354,300,000 ドル(前年同期比:▲19.0%)
全部で6つのカテゴリーがありますが、原産地呼称(D.O.:Denominación de Origen)やバルクワイン、スパークリングワインの3つのカテゴリーの内訳は以下となります。
原産地呼称(D.O.:Denominación de Origen)
- D.O. 輸出量:79,200,000 リットル(前年同期比:▲17.7%)
- D.O. 輸出額:257,000,000 ドル(前年同期比:▲19.7%)
先月のレポートに関する記事では、単月の数字を記載していました。今回は1〜3月の累積となっておりますのでご注意願います!
バルクワイン
- 輸出量:76,100,000 リットル(前年同期比:▲16.1%)
- 輸出額:71,800,000 ドル(前年同期比:▲16.2%)
スパークリングワイン
- 輸出量:500,000 リットル(前年同期比:▲28.8%)
- 輸出額:2,200,000 ドル(前年同期比:▲22.4%)
価格帯別の輸出量&輸出額(今回は変更点なし)
原産地呼称(D.O.)ワイン
2022 年の「D.O. ワイン輸出」に関して、1ケースあたり* の価格帯別の情報が出ています。輸出総額が一番大きい価格帯は「20ドル以上30ドル未満」のワインで、全体の【33%】を占めています。
*1ケース:9リットル(750mlのボトルが12本)
その他の考察としては、ケースあたりの平均単価は「100 ドル以上」のカテゴリーを除き、昨年対比で【-0.3 〜 +0.5 ドル】の幅で動いているだけです。「100 ドル以上」のカテゴリーに関しては、昨年から1ケースあたり平均単価が 5.8 ドル下がっています。
20ドル未満:
- 輸出量:14,900,000 ケース(2021 年:13,800,000 ケース)
- 輸出額:260,800,000 ドル(2021 年:234,600,000 ドル)
- 平均単価:17.5 ドル/ケース(2021 年:17.0 ドル/ケース)
20ドル以上30ドル未満:
- 輸出量:20,500,000 ケース(2021 年:21,100,000 ケース)
- 輸出額:481,200,000 ドル(2021 年:501,900,000 ドル)
- 平均単価:23.5 ドル/ケース(2021 年:23.8 ドル/ケース)
30ドル以上40ドル未満:
- 輸出量:7,300,000 ケース(2021 年:7,600,000 ケース)
- 輸出額:250,600,000 ドル(2021 年:263,200,000 ドル)
- 平均単価:34.3 ドル/ケース(2021 年:34.6 ドル/ケース)
40ドル以上60ドル未満:
- 輸出量:4,200,000 ケース(2021 年:4,900,000 ケース)
- 輸出額:193,700,000 ドル(2021 年:226,900,000 ドル)
- 平均単価:46.1 ドル/ケース(2021 年:46.3 ドル/ケース)
60ドル以上100ドル未満:
- 輸出量:1,800,000 ケース(2021 年:1,800,000 ケース)
- 輸出額:134,200,000 ドル(2021 年:134,800,000 ドル)
- 平均単価:74.6 ドル/ケース(2021 年:74.9 ドル/ケース)
100ドル以上:
- 輸出量:600,000 ケース(2021 年:600,000 ケース)
- 輸出額:138,900,000 ドル(2021 年:142,400,000 ドル)
- 平均単価:231.5 ドル/ケース(2021 年:237.3 ドル/ケース)
バルクワイン
「バルクワインの価格帯」については以下の通りとなります。輸出総額が一番大きい価格帯は「1リットルあたり0.8ドル未満」のワインで、全体の【33%】を占めています。
気づいた点が2点あります。
- リットルあたりの平均単価が上がっていないこと。ほぼ増減がないのですが、『3〜10 ドル』のカテゴリーでは、平均単価が 0.4 ドル近く下がっています。
- 『1〜1.5 ドル』のカテゴリーが占める割合が増加したこと。2021 年だと全体の 12% だったのが、2022 年では 26% に増えました。
0.8ドル未満
- 輸出量:152,600,000 リットル(2021 年:197,300,000 リットル)
- 輸出額:99,700,000 ドル(2021 年:131,600,000 ドル)
- 平均単価:0.65 ドル/リットル(2021 年:0.67 ドル/リットル)
0.8ドル以上1ドル未満:
- 輸出量:74,400,000 リットル(2021 年:99,500,000 リットル)
- 輸出額:65,000,000 ドル(2021 年:86,400,000 ドル)
- 平均単価:0.87 ドル/リットル(2021 年:0.87 ドル/リットル)
1ドル以上1.5ドル未満:
- 輸出量:67,300,000 リットル(2021 年:32,200,000 リットル)
- 輸出額:76,800,000 リットル(2021 年:37,900,000 ドル)
- 平均単価:1.14 ドル/リットル(2021 年:1.18 ドル/リットル)
1.5ドル以上3ドル未満:
- 輸出量:26,500,000 リットル(2021 年:21,000,000 リットル)
- 輸出額:50,000,000 ドル(2021 年:40.600.000 ドル)
- 平均単価:1.89 ドル/リットル(2021 年:1.93 ドル/リットル)
3ドル以上10ドル未満:
- 輸出量:2,000,000 リットル(2021 年:3,000,000 リットル)
- 輸出額:7,400,000 ドル(2021 年:12.200.000 ドル)
- 平均単価:3.70 ドル/リットル(2021 年:4.07 ドル/リットル)
10ドル以上:
- 輸出量:ほぼ実績なし
- 輸出額:ほぼ実績なし
ブドウの品種別
「ブドウの品種ごと」の輸出量や輸出額を確認してみました。
2023年3月までの累積で、最も「輸出量」の多い単一品種トップ5は以下となります。【カベルネ・ソーヴィニヨン】がダントツで多いです。
( )内は3月単体
- カベルネ・ソーヴィニヨン:14,059,000 リットル(5,498,000 リットル)
- シャルドネ:6,970,000 リットル(2,554,000 リットル)
- ソーヴィニヨン・ブラン:6,899,000 リットル(2,621,000 リットル)
- メルロ:5,551,000リットル(2,370,000 リットル)
- カルメネール:5,157,000リットル(3,398,000 リットル)
前年対比で輸出量の変動が大きい品種は以下の通りです。
増加
- シュナン・ブラン:+164.5%
- ピノ・ブラン:+25.7%
- マルベック:+20.5%
減少
- シラー:▲39.2%
- ピノ・ノワール:▲34.5%
- カベルネ・ソーヴィニヨン:▲31.6%
2023年3月までの累積で、最も「輸出額(FOB)」の多い単一品種トップ5は以下となります。
( )内は3月単体
- カベルネ・ソーヴィニヨン:48,034,000 ドル(18,382,000 ドル)
- シャルドネ:21,464,000 ドル(7,698,000 ドル)
- ソーヴィニヨン・ブラン:19,186,000 ドル(7,222,000 ドル)
- カルメネール:19,089,000ドル(6,638,000 ドル)
- メルロ:14,541,000ドル(6,139,000 ドル)
前年対比で輸出量の変動が大きい品種は以下の通りです。
増加
- シュナン・ブラン:+167.2%
減少
- ペドロ・ヒメネス:▲56.1%
- シラー:▲36.6%
- カベルネ・ソーヴィニヨン:▲35.6%
輸出先別
次に「輸出先別」にみた輸出量や輸出額の情報となります。
D.O. ワイン、バルクワイン、スパークリングワインの順です。
D.O. ワイン
2023年3月までの累積で、「D.O. ワイン」の輸出量が多い国のランキングです。
( )内は3月単体
- ブラジル:12,818,000 リットル(5,571,000 リットル)
- 日本:8,758,000 リットル(2,384,000 リットル)
- 中国:6,645,000 リットル(2,943,000 リットル)
- イギリス:6,217,000 リットル(2,222,000 リットル)
- アメリカ:5,892,000 リットル(2,311,000 リットル)
3月単体でも、ブラジル向けが堅調です!前月から1位をキープ。中国がイギリスを上回り3位へ浮上。
増加
- ドイツ:+97.3%
- ブラジル:+16.3%
- 韓国:+3.0%
減少
- 中国:▲52.2%
- イギリス:▲49.4%
- カナダ:▲43.9%
2023年3月までの累積で、「D.O. ワイン」の輸出額(FOB)が多い国のランキングです。
( )内は3月単体
- ブラジル:35,398,000 ドル(14,525,000 ドル)
- 中国:28,959,000 ドル(12,634,000 ドル)
- 日本:24,137,000 ドル(6,758,000 ドル)
- アメリカ:22,798,000 ドル(9,036,000 ドル)
- イギリス:18,037,000 ドル(6,441,000 ドル)
中国が日本を抜き、2位へ浮上!中国への輸出量は日本とあまり変わらないけど、輸出額が大きいということは、ケースあたりの単価が日本よりも高いということになりますね。それでも中国向けの輸出額は、前年比で 48.5% 減。
増加
- ドイツ:+57.3%
- ブラジル:+22.0%
- 韓国:+7.6%
減少
- イギリス:▲52.3%
- カナダ:▲48.7%
- 中国:▲48.5%
バルクワイン
2023年3月までの累積で、「バルクワイン」の輸出量が多い国のランキングです。
( )内は3月単体
- 中国:24,419,000 リットル(10,216,000 リットル)
- イギリス:13,696,000 リットル(5,056,000 リットル)
- アメリカ:11,773,000 リットル(4,826,000 リットル)
- ドイツ:5,520,000 リットル(2,352,000 リットル)
- 日本:5,236,000 リットル(1,500,000 リットル)
ドイツが日本を抜き、4位へ浮上!
増加
- ベルギー:+193.8%
- メキシコ:+115.1%
- カナダ:+57.6%
減少
- アメリカ:▲56.2%
- イギリス:▲29.9%
- フランス:▲28.4%
2023年3月までの累積で、「バルクワイン」の輸出額(FOB)が多い国のランキングです。
( )内は3月単体
- 中国:20,560,000 ドル(8,129,000 ドル)
- イギリス:16,632,000 ドル(6,133,000 ドル)
- アメリカ:11,706,000 ドル(5,030,000 ドル)
- ドイツ:4,649,000 ドル(1,603,000 ドル)
- 日本:4,340,000 ドル(1,294,000 ドル)
こちら輸出額においても、ドイツが日本を抜き4位に浮上しています!
増加
- ベルギー:+197.6%
- カナダ:+64.8%
- メキシコ:+54.1%
減少
- アメリカ:▲45.4%
- フランス:▲33.1%
- イギリス:▲15.0%
スパークリング
2023年3月までの累積で、「スパークリング」の輸出量が多い国のランキングです。
( )内は3月単体
- 日本:249,000 リットル(113,000 リットル)
- キプロス:40,000 リットル(31,000 リットル)
- ブラジル:33,000 リットル(0 リットル)
- アメリカ:26,000 リットル(6,000 リットル)
- 韓国:22,000 リットル(0 リットル)
増加
- キューバ:+600%
- 韓国:+340%
- デンマーク:+60%
減少
- コロンビア:▲84.3%
- ブラジル:▲71.3%
- オランダ:▲57.1%
2023年3月までの累積で、「スパークリング」の輸出額(FOB)が多い国のランキングです。
( )内は3月単体
- 日本:1,080,000 ドル(476,000 ドル)
- キプロス:150,000 ドル(150,000 ドル)
- 韓国:133,000 ドル(0 ドル)
- アメリカ:104,000 ドル(26,000 ドル)
- ブラジル:82,000 ドル(3,000 ドル)
増加
- キューバ:+1000%
- 韓国:+411.5%
- デンマーク:+79.4%
減少
- コロンビア:▲83%
- ブラジル:▲74.1%
- オランダ:▲48%
品種別生産量(変更なし)
最後に品種別の「生産量」です。
- カベルネ・ソーヴィニヨン:340,922,000リットル
- ソービニヨン・ブラン:141,061,000リットル
- メルロー:123,223,000リットル
- シャルドネ:104,103,000リットル
- カルメネール:88,431,000リットル
- シラー:61,230,000リットル
- ペドロ・ヒメネス:31,495,000リットル
- ピノ・ノワール:26,947,000リットル
- マルベック:25,691,000リットル
- パイス:15,947,000リットル
- モスカテル:11,990,000リットル
最後に
2023年も始まり、もう3か月目のデータが開示されました。最初の3か月なので、順位や前年対比率など、数字が大幅に変わってくることも見受けられます。チリのワイン輸出先にとって、日本は重要なポジションにいると思います。日本はすでに成熟しているマーケットかもしれませんが、中国ばかり見ずに、ぜひ日本向けの販売促進もしてほしいですね!