雑記

【駐在員は知っている】海外勤務で役立つ契約書に関する基礎知識

三男
三男
今回の記事はモアイがチリの教育機関で学んだことのアウトプットだヌイ!ローカルのエグゼクティブ達と対等に渡り合うために頭を鍛えているヌイ!

本記事の内容

  • 海外勤務において重要な知識である「契約書」についてまとめています。

本記事の信頼性

  • 南米チリ在住6年目の純日本人男性
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海外勤務中には、『どんな能力が必要なんだろう?』と考えたことはございませんか?

この記事で紹介する「契約書の基礎知識」を学習すると、プロジェクト管理業務に必要な知識がつき、日頃の業務において大事な視点を補うことができます。

駐在員ではありませんが、僕も実際に学習して視野が広がりました。

この記事では、「契約書の基礎」を紹介して、関連するスペイン語もご紹介します。

記事を読み終えると、今後「契約書」に関する議論でどんどんとリーダーシップをとることができます。

 

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海外勤務において契約書の基礎知識が大事な理由

海外勤務において契約書の基礎知識を身につけることは大切です。

海外では契約書のやりとりが頻繁に行われ、日本企業の現地プロジェクトでは駐在員が契約内容をきちんと把握しておく必要があるからです。

実際に外国で勤務していますが、契約書のレベルにも大小の差はあるものの、日頃の業務から契約書に目を通すことが非常に多いです。

例えば労働契約書一つにしても、駐在員・ローカル関係なく締結します。

 

契約書とはそもそも何なのか?

まずは契約書自体、どのような内容なのかを確認していきましょう。

基本的にこの記事の中の契約書は、建設プロジェクトのものを想定しております。

 

契約書とは当事者同士が決めた内容を示す文書となります。

  • 契約書とは当事者間の【法律】
  • 契約は当事者間の合意内容に基づき作成される

 

管理ベースというものが定められています。

  • 一般管理ベース:Bases Administrativas Generales(BAG)
  • 特定管理ベース:Bases Administrativas Especiales(BAE)

 

エンジニアリングや建設契約の主な特徴は以下の通りとなります。

  • 契約書の公平性、当事者の同等性
  • 当事者の誠実性の認識
  • 誠意、共感
  • 共通の目的達成

自分にとって結構意外だった概念は「公平性」。なんとなく委託者(顧客)が受託者(業者)よりも強いイメージを抱いていました。

その概念から見直す必要がありました。

 

なぜ、このようにきちんと契約を締結するかというと、当事者間で論争が生じる可能性があるからです。

論争を減らすために必要な考え方

  • 当事者の「善意=経済性」のバランス
  • 自発性① 一方のミスが他者の経済性に影響しないように
  • 自発性② 困難な問題の早期解決

要は、お互い気を配るのは大前提で、早期解決できるようなメカニズムを準備しておきましょうってことです。

 

契約書に記載すべき内容とスペイン語

建設契約に記載されるべき内容は以下の通りです。スペイン語表記もあります。

建設契約に記載されるべき内容
契約書の目的 objeto del contrato
契約書と優先順位 documentos del contrato y orden de prelación
金額と再調整の方式 precio (determinado y forma de reajuste)
支払い方法 forma de pago
追加工事 aumentos de obra
契約当事者の宣言 declaración del contratista
労務上の義務・下請法 obligaciones laborales y trabajo en régimen de subcontratación
その他の義務(HSEC) seguridad, salud ocupacional, medio ambiente, bienes nacionales
工事記録と会議 libro de obra y reuniones de obra
工事材料の品質 calidad de los materiales
工期 plazo de ejecución de obras
現場の提供 entrega de terreno
当事者の許認可 permisos de cargo del mandante y de cargo del contratista
下請けと契約満了 subcontratación y cesión del contrato
補償と返金 garantías y devoluciones
保険 seguros
違約金、保証金、責任の範囲 multas, indemnizaciones y limitación de responsabilidad
工事完了 recepción de la obra, provisional y definitiva
事前の契約終了条件 causales de término anticipado
論争解決のメカニズム mecanismo de solución de controversias
適用される法規 ley aplicable

 

次に契約書関連書類をご紹介します。

契約書関連のドキュメント
契約書&付録 contrato y sus modificaciones
競売通知 carta de adjudicación
同意書・覚書 acuerdos escritos previos
契約業者側 除外項目 exclusiones a la oferta del contratista
委託者からの質問回答 respuestas escritas a consultas y aclaraciones
特定管理ベース bases administrativas especiales
仲介と支払いのベース bases de medición y pago
HSEQ スタンダード estándares de seguridad, salud ocupacional, medio ambiente y calidad
技術的なベース bases técnicas
一般管理ベース bases administrativas generales
契約業者からの質問回答 aclaraciones a la oferta técnica o económica del contratista
契約業者の技術的オファー oferta técnica del contratista
契約業者の経済的オファー oferta económica del contratista
長男
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契約書のグローバルスタンダード

チリでは委託者と下請業者が契約書の準備を行うことが通常ですが、東欧・ニュージーランド・南ア・豪州などでは機関や同業組合が準備することがあります。

主なスタンダード一覧
  • FIDIC:Federation Internationale de Ingenieurs – Conseils
  • NEC:New Engineering Construction Contract
  • Serie 200
  • Serie 101
  • UK Joint Contract
  • Tribunal JCT 98
  • NSPE:National Society of Professional Engineers
  • CMAA:Construction Management Association of America

 

建設工事契約の種類

「契約金額」と「サービスの範囲」の2つの観点から分別することができます。

 

契約金額
  • ランプサム形式(固定単価)
  • 最大価格保証+ランプサム(Open Book)
  • 実費精算+固定金額(Cost Plus)

実費精算は小規模のプロジェクトに向いています。

 

サービスの範囲
  • エンジニアリングのみ(E)
  • エンジニアリング+調達(EP)
  • エンジニアリング+調達+建設(EPC)
  • エンジニアリング+調達+建設+建設管理(EPCM)
  • デザイン+建設(D&B)
  • エンジニアリング+融資+調達+建設+試運転(Llave en mano)
  • 公共工事の委譲契約(DS MOP N900)※チリ

 

 

1億ドル以上のプロジェクトではエージェントに依頼することが推奨されています。

 

エージェントの規模は大きすぎなくてもいいが、経験のあるエージェントを選ぶこと。EPCM 契約の場合、エージェントが委託者の代わりに各種契約書に署名を行う。

ただし、委託者が全てを委任するわけではなく関与することがあるので、下請け業者からすると「プロジェクトオーナー」と「EPCM 請負業者」の2社が委託者となって、トラブルが生じる可能性がある。

 

それではどのようにして契約形態を選択するかですが、まず必要な情報を把握します。

契約形態の選択に向けて考える
  • 有効な情報の質と正確さ
  • リスクとリスクの割り当て
  • 工事期間と必要条件
  • 投資額
  • オーナーの参加度合い
  • サービスの範囲と性質
  • 労働市場
  • サプライヤー市場

 

 

実費精算 vs ランプサム

『固定金額形式』は日本国内の商取引で多く用いられ、欧米を中心とした海外では『実費精算形式』が主流です。

 

実費精算形式の組み合わせ

実費精算形式には6つの組み合わせがあります。

  1. 実費精算+報酬(コストに対するパーセンテージ)
  2. 実費精算+報酬(コストに関係なく一定)
  3. 実費精算+報酬(インセンティブ)
  4. 実費精算+報酬(最大保証金額)
  5. コンバーチブル契約
  6. ユニットプライスシリーズ契約

 

実費精算+報酬(コストに対するパーセンテージ)

 

実費精算+報酬(コストに関係なく一定)

 

実費精算+報酬(インセンティブ)

 

実費精算+報酬(最大保証金額)

 

コンバーチブル契約

 

ユニットプライスシリーズ契約

 

固定金額形式の組み合わせ

固定金額契約には7つの組み合わせがある。

  1. ランプサム
  2. マルチプルランプサム
  3. 固定金額+インセンティブ
  4. 固定金額+再調整
  5. デザイン/建設(複数企業)
  6. デザイン/建設(単体企業)
  7. デザイン/建設/開始(Llave en Mano)

 

ランプサム

 

マルチプルランプサム

 

固定金額+インセンティブ

 

固定金額+再調整

 

デザイン/建設(複数企業)

 

デザイン/建設(単体企業)

 

デザイン/建設/開始(Llave en Mano)

 

インセンティブについて

インセンティブは1億ドル以上の投資案件において用いられることが多いです。

以下におけるインセンティブが主流。

  • 予算
  • 期間
  • 安全と操業パフォーマンス

安全成績に関するインセンティブは直接労働者に渡すべきとされる。

 

 

契約書の特徴(法的観点)

契約書は許容できるリスク内の範囲であり、柔軟であることが必要となります。

契約形態によってリスクの度合いが異なります。

 

契約書の性質
  1. Contratos tradicionales
  2. Contratos relacionales

これまでは①が主流であったが、現在では②に変わりつつあります。

②の特徴としては、オーナーがプロジェクトチームに参加すること。

 

プロジェクト管理の有名な考え方としては以下の3つがあります。

  • Lean Project Delivery
  • Partnering
  • Alliancing

 

Partnering の特徴

当事者に利益をもたらす明確な目的を同意書に記載することが必要です。

基本的に【信頼・協力・チーム】で成り立つものであり、パートナー選択などで最低でも6ヶ月は必要。長期的に信頼でき、お互いのビジョンを共有しあえるパートナー選択が肝となります。

ここに本文を入力

 

Partnering の組み合わせ
  • オーナー × エンジニア
  • オーナー × 建設業者
  • オーナー × プロバイダー

 

Partnering をうまく進めるためのポイント
  • 目的を明確に記載した同意書の準備
  • マネジメントの役割・責任の明確化
  • マネジメントの相互協力
  • リーダーシップ
  • リスクの管理者選定
  • オープンで誠実性のあるコミュニケーション
  • オフィス・インフラ・その他リソースの共有
  • 共通の情報システム(Libro abierto)を利用
  • 工事の先行計画
  • 建設性の確認
  • デザインとソリューション革命への支援
  • モニタリング

 

早期から行う関係構築には以下のような手法を使うことができます。

  • Target Value Design
  • Last Planner System
  • Building Information Modeling

 

法的観点から見ると、契約書には以下のことを含んでおく必要があります。

  • 違反金
  • 保証金
  • 変更指示の積算
  • 契約の責任区分
  • 労務的な義務
  • 論争解決
  • 過失
  • 不可抗力
  • 保険契約

 

契約に含めるべき論争解決

論争解決に一番効果的なのは早期から第三者機関に仲介してもらえるような仕組みにしておくことです。

 

以下の二つの当事者が考えられます。

  • 自発的かつ拘束されていない(voluntaria y no vinculante)
  • 義務的かつ拘束されている(obligatoria o vinculante)

 

早期解決にとって有効な2つの手段は以下の通り。

  1. 決議委員会(Paneles de Resolución)
  2. 紛争裁定委員会(Dispute Boards) / 技術委員会(Paneles Técnicos)

①に関してはプロジェクト初期から定期的に活動する役割があります。

②に関しては、論争の早期フェーズに「交渉」し解決する役割を持つ。ただし、契約書の内容や実行に関して完全に把握しておくことが重要となります。

 

紛争・論争を抑えるためには防止策に努めることが最重要です!

 

 

Dispute Boards の特徴
  • 論争防止の相談役
  • 契約金額の 0.05% から 0.5% のコスト
  • 3つの定義がある
  • 構成員は3名(代表+2名)
  • 5 億ドルまでの投資案件の場合は1名
  • 契約書に記載すること

 

 

論争は以下のように分類することができます。

  1. Reclamo:当事者間で解決
  2. Mediación:調停者の協力を得て解決
  3. Arbitraje:仲裁を通じて解決
  4. Justicia Ordinaria:裁判を通じて解決
次男
次男
④に関しては、チリでは非常に遅いため推奨されないラパ!

 

 

過失の種類と度合い

「責任の範囲」と「過失の特徴」を契約書に明記します。

過失度合い
  • Grave:詐欺レベル
  • Leve:当事者間が契約内容についてクレームするレベル
  • Levísima:入念な手続きが不足していたため生じるレベル

 

論争時に報告すべき内容
  • 発生したダメージ
  • 発生した被害額
  • モラルダメージ

 

不可抗力の種類
  • ストライキ
  • 操業停止
  • ロックアウト
  • 天災

 

論争防止に ITO の利用が推奨されています。

ITO:Inspección Técnica de la Obra (工事の技術的な点検)の略語

 

以下のことが点検される。

  • 建設工事に適用される関連法規
  • 承認済みの許認可
  • 該当する建築プロジェクト

 

建設工事におけるミスや欠陥は請負業者の責任となります。

チリでの保証期間
  • 構造的な品質:10年
  • 建設素材や施設の素材:5年
  • 工事の仕上げ:3年

 

建設業界での連盟の役割

日本でも産業界においてはさまざまな業界団体が存在していると思います。チリでも同様に業界団体があります。また関連企業での連盟も存在しておりますので、ここではその役割をお伝えします。

 

プロジェクトや契約書を共有し、以下のファクターを促進することが主な役割です。

  • 一般化
  • プロジェクトの規模
  • マーケットの要求

 

連盟には以下のタイプが存在します。

  1. 建設業者間(地域ごと)
  2. 請負業者間
  3. エンジニアリングと建設業者

 

 

契約までのステップである入札

入札を成功させるかどうかは、入札期間における管理が重要となります。

 

入札には大きく2つのステージ。

  1. 準備期間
  2. 入札期間

 

準備期間で用意するもの
  • BAG / BAE
  • HSEC スタンダード
  • 契約書のドラフト
  • 技術仕様書、図面
  • 支払い方法
  • 詳細の質疑応答
  • 詳細の講習会
  • 現場視察
  • 入札プログラムの策定

 

BAG: Bases Administrativas Generales

BAE: Bases Administrativas Especiales

HSEC: Health, Safety, Environment and Community

 

まとめ

  • 契約書がきちんと交わされるため、学習しておくことをお勧めします。
  • 契約書とは当事者間の法律のようなものです。
  • 契約書に記載すべき内容を羅列しました。スペイン語も学べます。
  • 契約書にはグローバルスタンダードがあります。有名なのは FIDIC や NEC。
  • 建設工事契約には「ランプサム」「実費精算」があります。
  • サービスの範囲は多岐にわたり、大型建設工事では「EPC契約」または「EPCM契約」が主流です。
  • 契約には論争がつきものです。事前に予防策を検討すべきです。
  • 決議委員会または紛争裁定委員会・技術委員会が効果的です。
  • 契約までのステップである入札管理も大事です。

 

いかがでしたでしょうか?

こういった知識があれば普段の業務にも考え方を取り入れることができます。

小さな契約だったとしても、契約書に含めるべき条項をリストからピックアップしてみてください。

頑張って海外の生活を有意義なものにしましょう!

 

 

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