本記事の内容
- チリでのプロジェクト開発の推移と昨今のチャレンジについて
- 建設プロジェクトにおける基礎知識(フェーズ、契約戦略、リスク管理)
本記事の信頼性
- 南米チリ在住6年目の純日本人男性
- チリ人女性と国際結婚、1児のパパ
- 企業戦士を支える立場で絶賛活動中
- 絶望から這い上がろうと日々奮闘中
動詞の活用に特化したアカウントです
Contents
はじめに
チリで現地社員として勤務して早4年が経過します。
このままで自分はいいのだろうか?
と自問自答をすることが何度かありました。
考えるだけだと悩まされるだけなので行動です。
行動していれば悩んでいる時間なんて皆無。
自問自答をして、当然答えはノーです。
じゃあどうするのか?
駐在員の能力に追いつく、
果ては追い抜く気概で日々業務に取り組みこと。
それと知識を学んでいくことに尽きます。
駐在員にできて、自分にできないこと。
駐在員にできなくて、自分にできること。
そういったことを考えたときに、
明らかな知識・経験不足と語学力
という結論に至りました。
じゃあ駐在員にとっては難しいであろう
現地の教育機関で体系的にビジネスを学びつつ
現地での経験を積んでいくことに注力すればいいのではないか。
と思って今日に至ります。
今回から3回に分けて、
駐在員なら知っている基礎知識の一部をお伝えしていきます。
現地社員も重要な戦力としてカウントしてもらえるよう
頑張っていきましょう!
ちなみにこれは建設プロジェクトをベースとしていますが、
本質的なところを捉えると日頃の業務にも活かせます。
チリでのプロジェクト開発
チリでのプロジェクト開発推移
チリの独立は 1818 年。80 年代後半に国鉄が設立され、公共事業省の前進機関ができました。
- 1884 年:国鉄(EFE)設立
- 1887 年:MOP の前進設立
- 1940 年代から 50 年代:コンサルタント会社設立(MOP 向け)
- 1970 年代:国営鉱山向けエンジニアリング&建設開発
- 1980 年代:コンサルタント会社がプロジェクト初期段階から関与する傾向に。外国企業がチリへ本格的に進出する。
- 1990 年代:エンジニアリングサービスの国外輸出開始。
- 1996 年:Ley de Concesiones 公布
- 2000 年代:南米諸国へサービスの輸出が盛んになる。
MOP って何?って方は以下の記事でご確認いただけます。
直近 20 年で直面している新しいチャレンジ
2000 年に入ってからチリが直面している挑戦がいくつかあります。
- グローバル化の成長プロセス
- 私営企業化のプロセス
- M&A、連盟
- サステナビリティ(社会、環境、経済性)
- 契約書形式(D&B、EPC、EPCM、BOT)
- Fast Track
建設プロジェクトに携わった経験のない現地社員は、契約書の形式や Fast Track って何?ってなろうかと思います。
このシリーズでは少しそのような知識を学んでいただけます。
建設プロジェクトにおける基礎知識
ここから建設プロジェクトに関する基礎知識をお伝えします。
プロジェクト開発のフェーズ
プロジェクト開発には大きく分けて2つのフェーズがあります。
- 構想段階または投資前
- 実行段階または投資中
それぞれのフェーズにおいて重要なポイントが異なります。
- プロジェクト所有者がビジネスの明確な目的を定義すること。
- PEP などの準備と予算の作成
- サステナビリティ(社会、環境、経済性)の調査
- フィージビリティスタディ
- 動員計画の策定
- 戦略&計画の実行
- 契約&購買の実行
- プロジェクト所有者は管理に焦点
PEP:Plan de Ejecución de Proyecto / プロジェクト実行計画
投資総額が、35 億ドル以上のプロジェクトの場合は、外部の国際的な専門家の力を借りるべきとされているそうです。
オーナーと下請けの関係
オーナー (委託者)と下請け業者(受託者)間では契約上や実行段階で論争が生じる可能性があります。
投資プロジェクトの2つのフェーズによって、トラブルとなる原因が異なります。
(=根本的な問題)
- プロジェクトの目的が不明確
- フィージビリティスタディ不足(エンジニアリング、計画、予算)
- リスク管理上のミス
- サステナビリティのないプロジェクト
(=直接的な問題)
- 両者の契約管理能力不足
- 契約書の品質や偏り
- 入札プロセスが不適正
- 論争の早期解決能力不足
プロジェクト契約戦略について
建設プロジェクトを成功に収めるためには、『契約戦略』が要となります。
契約戦略を策定するにあたり必要な前情報
これがなければ契約戦略を立てることができないので、まずはこの前情報がきちんと整っているかを確認しましょう。
- ビジネスの目的とプロジェクトの定義
- オーナーの特徴
- プロジェクト構想段階のエンジニアリング
- リスク分析と管理
- プロジェクトの持続性分析
- マーケット条件
ビジネスの目的や契約戦略を定めるタイミング
意思決定のタイミングもかなり重要です。
- 目的の定義:事前調査時
- 目的設定完了:プレフィージビリティスタディ(PFS)
- 契約戦略の定義:フィージビリティスタディ(FS)
オーナーの特徴
オーナー側の立場の人もいれば、受託者側の立場の人もいると思います。ここではオーナー側の目線でお伝えしております。
- プロジェクトが会社のポートフォリオでどの位置にあるのか(優先度)
- 自社の人材や外注業者の管理能力
- どこまでリスクを許容できるのか
- どのようにしてプロジェクト資金を調達するのか
プロジェクト構想段階(投資前)の役割とコスト
投資前のタイムラインとなります。
Preliminary:コストは投資総額の 0.5% 程度
ビジネス機会を有効にするための調査。また次のステップへ進めるための代替案を選択する。
プレフィージビリティスタディ(PFS):コストは投資総額の 1.5% 程度
代替案それぞれのコンセプチュアルエンジニアリングを実施。
フィージビリティスタディ(FS):コストは投資総額の3〜5% 程度
ベースエンジニアリングの実施。投資実行の承認をもらってこのステップを終える。
4つの投資フェーズ
投資には4つのフェーズがあるということを抑えておきましょう。
投資案件において重要なこと
全ての投資案件において重要なことがあります。
- オーナーが業務を適正に割り当てること
- オーナーの責任範囲
- 下請け業者の責任範囲
- ファストトラック
オーナーと下請け業者の責任範囲
オーナーの責任範囲はまとめてサステナビリティと呼べます。これに加えて経済性の自立も重要なポイント。
Fast Track について
ファストトラック(fast track)とは建設用語です。主な特徴は以下の通り。
- 全体の設計がまとまらない内に、部分的に設計を完成できるところから着手する。
- メリットとしては設計が完成したところから順次施工を開始できる。
- そうすることで工期の短縮を図ろうとするもの。
- デメリットとしては後に問題点が見えてき、後戻りする可能性がある。
- また支払い内容などの確認プロセスも複雑化してしまう。
リスク管理の重要性
リスク管理表を作成し、マネジメントを行うことがマストとなっております。
- プロジェクト早期に作成する
- 定性的にリスク評価
- 定量的にリスク評価
- 管理と再評価をまめに
コンフリクトの元となるので、耐えうることができないリスクを下請け業者に割り当てないことが最重要です。
またプロジェクト早期からスペシャリストの投入が推奨されています。
投資前フェーズにおける活動およびリスク
ここでは各フェーズごとにおける活動・責任・リスクをお伝えします。
投資前のフェーズ:Etapa Preinversional
主な活動:
- 企業や機関のビジネスまたはプロジェクト計画を管理・運営するための組織と戦略
- エンジニアリング契約を実行し、管理する組織と戦略
責任:
- オーナー
リスクと機会:
- ビジネスまたはプロジェクトを管理・運営するために不十分な組織と戦略は企業や機関の不十分な開発へとつながる。
管理:
- 企業や機関は組織や登録システムを所有しなければならない。そのシステムにはさまざまな開発フェーズにおける「必要事項、投資機会、投資前調査」を登録する。
- 定性的かつ定、量的な承認メカニズムを設ける。さまざまなフェーズを網羅しており、提案された「必要事項、投資機会、投資前調査」の選択を可能とする。
- この時期からコンサルタントを雇用することが推奨される。
投資前のフェーズには3つありました。
- 投資前基礎調査
- プレフィージビリティスタディ(コンセプチュアルエンジニアリング、PFS)
- フィージビリティスタディ(ベースエンジニアリング、FS)
① 投資前基礎調査
このフェーズでは、以下2つの活動が考えれられます。
活動:
- 必要事項の解決と機会の利用を行うための可能性のあるアイデアの基礎調査
- 次のフェーズに移行するかを判断する。プロジェクトのアイデアに取り組み、再計算を行う。調査を継続するか、延期させるか。
責任:
- オーナー
リスクと機会:
- もしオーナーが投資前基礎調査を行わなければ、何が必要で何が有効なのかが分からない。それによって、必要以上に会社のリソースを投入する可能性がある。
- 開発を継続することで、後に重要な案件となりうるプロジェクトを選択しない。または、後に悪い結果となるプロジェクトのアイデアを選択してしまう。
管理:
- 必要性を解決するため、または機会を利用するための全てのアイデアの基礎調査を確実に行う。外部専門家の力を借りることも有効。
- 選択時にミスを犯さないためにアイデアに優先順位をつけるメカニズムを設立すること。
② PFS
このフェーズでは、以下3つの活動が考えれられます。
活動:
- さまざまな代替案のために、基礎調査から次の PFS に行くことが有効かを判断する。
- PFS 実行を計画する。
- PFS とコンセプチュアルエンジニアリングを契約する。
責任:
- オーナー
- オーナー
- オーナーと下請け業者
リスクと機会:
- 会社の上層部が合意していないアイデアにリソースを投入してしまうこと。
- 事前計画なしでは、調査は失敗に終わる可能性がある。可能性のある代替案に対して、プロジェクトの目的の遂行を確認する。
- PFS と基礎調査はプロジェクトにもっとも価値を与える調査であるため、ミスや不足はマイナスの影響を大きく受けることがある。
管理:
- 提案された PFS がすでに基礎調査レベルで会社の上層部から承認を得ているか確認すること。
- PFS が承認された予算を持っているか確認すること。「PFS 実行のための期間」と「エンジニアリング会社契約のためのもっとも適正な方法」を定義づけること。
- コンセプチュアルエンジニアリングでは、外部専門家が参加すること。プロジェクトへ貢献する価値を考えると、彼らのコストは取るに足りない。さまざまな代替案のリスク分析を行うこと。
③ FS
このフェーズでは、以下3つの活動が考えれられます。
活動:
- PFS から次の FS に行くことが有効かを判断する。
- FS と上層部から選択された案のベースエンジニアリングを契約する。
- FS から次の投資フェーズに行くことが有効かを判断する。
責任:
- オーナー
- オーナーと下請け業者
- オーナー
リスクと機会:
- 会社の上層部が合意していないアイデアにリソースを投入してしまうこと。
- この調査ではプロジェクトに価値提供を付加するのみならず、建設工事のより重要な側面を定義づけるもの。FS がプロジェクト承認のベースとなる。
- 最終的に悪い投資となる可能性のあるプロジェクトを実行するか判断する。
管理:
- 提案された FS がすでに基礎調査レベルで会社の上層部から承認を得ているか確認すること。
- 「ベースエンジニアリング」と「技術的かつ経済的調査」への高い信頼性を確保すること。これがプロジェクトへの投資判断のベースとなる。
- 実行された PF の前提条件が投資判断をするために十分であるかを確認すること。プロジェクトは【環境・社会・経済性】において、持続性のあるものでなければならない。
まとめ
- チリでのプロジェクト開発は 1800 年代後半から活発になっています。
- 直面しているチャレンジは、成長・サステナビリティ・契約形態などがあります。
- プロジェクトには構想段階と実行段階の2つのフェーズがあります。
- それぞれのフェーズによってトラブルの原因が異なります。
- 投資前の構想段階では、戦略計画&基礎調査・コンセプチュアルエンジニアリング・ベースエンジニアリングの3つのエンジニアリングフェーズがあります。
- それぞれのフェーズによって、活動内容・責任・リスク・管理の方法が異なります。
- プロジェクトを成功に収めるためには「契約戦略」が重要です。
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